ルートクライミングでは、「リード」>>「トップローブ」という価値観が一般的です。
極端に言うと、ルートクライミングは、リードしてなんぼであり、トップローブで登っても、それではまだ登ったとは言えない、という考え方です。
確かに、リードルートをトップローブで登っても、RPしたと言う事はできません。あくまで、TRで登ったということを言い添えないと、誤解が発生してしまいます(当該ルートが、TR課題の場合は別ですが)。
ですから、ルートの講習をしていると、以下のリクエスを受けることが良くあります。
・リードクライミングの講習をお願いします。
・墜落したことがないので、練習がしたいです。教えてください。
・まだ、長い距離の墜落をとめた事がないので、教えてください。
リクエストにお応えしたいのは、やまやまですが、全てお断りしています。
なぜなら、講習では、安全配慮義務という法的な責任が、講習側にありますが、TRと比べて、リード中の講習生をコントロールして安全を確保する手段は極めて少ないからです。
講習生が、講習でリード中にケガをした場合、上記の責任を免れる事は困難です。
日本では、例えばカナダのように、免責同意書について、一定の法的効果が法定されてる国ではありません。
それで、ぼくの講習では、講習中はTRで確保した上で、リードクライミングの練習をしていただいています。例えると、補助輪付きで自転車に乗る練習、安全ネットを設置した上での空中ブランコの練習にあたります。

そして、講習修了後に、対等なクライミングの仲間という立場で、全くのボランティアで、一緒に、リードクライミングをするということにしています。
もちろん、この形式でも、一定の法的リスクがぼくには発生せざるを得ません。
しかし、リードクライミングの技術は、現場において、経験者から初心者に申し送くるのが最も安全な方法です。 ですから、このリスクは引き受けざるを得ないと覚悟しています。
昔、ぼくにリードクライミングを教えて頂いた先輩方からの贈り物を、次の世代に受け渡す道義的な責任があると感じるが故に。

今回の講習後のプライベートタイムでは、みなさんが、リードにトライされ、お一人は、原住民(5.10)をRPされました。 おめでとうございます。